モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

そもそも、沙羅は
姉に関する悩み事を
きいてほしくて
来たのだ。

それなのに、
相談相手に悩み事を
増やされて
しまったのでは、
もう、どうにも
しようがないでは
ないか。

とにかく落ち着こうと、
クッションの下から
這い出て、きちんと
座りなおす。

天明の淹れて
くれたお茶は、
沙羅が寝る前に
好んで飲む、
カモミールだ。



一口含み、
柔らかく優しい
香りがひろがって、
沙羅の心が
落ち着きはじめた、
その直後。


突然のガラスの
割れる音と、
姉のものと
思われる悲鳴が、
ようやく落ち着き
かけた沙羅の心を
ふたたび揺さぶった。



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