モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

異変―朔夜


沙羅たちを残して、
足早に自室を後にした
朔夜は玄関ホールが
見える窓に駆け寄ると
勢いよく窓を開けた。

そうして、僅かな
躊躇も見せず、
2階の窓から身を
躍らせる。

普通の人間なら、
怪我を負いかねない
高さから飛び降りたと
いうのに、朔夜は
その場で軽くとび
跳ねたかのような
そぶりで地面に
降り立った。

その場で周囲の
気配を探るが、
とくに怪しいものは
感じられない。

「…。侵入者やほかに
異変がないか、
周辺をくまなく探れ。」

手のひらを傷つけ、
血をこぼして、
朔夜はそう命じる。

こぼれ落ちた血は、
地に触れるや否や
十数匹の猫の姿にかわり、
朔夜の命令に従って
四方に駆けだした。

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