モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

「…姉さん。何か、
気になることでも?」

静かに近づいてきた男が、
再び話し合いを始めた
町長や住人たちの
気を引かないように
小声でたずねた。

シプレの一番下の弟、
シオンだ。

「…別になんでも
ないよ。」

シプレと違って
わりと温厚な弟だが、
さすがにシプレの
掴んでいる情報には
いい顔をしないだろう。

そう確信があったから、
シプレは弟の
疑問をごまかした。

「あれ、帰って
しまうの?姉さん。」

「喪中とはいえ、
せっかくの休みなんだ。
こんなくだらない話に
時間割くくらいなら
うちの商品たちの
品質管理に時間を
割いた方が
マシだろう。」

席を立ったシプレに
弟が問いかけ、
再び街の住人たちが
こちらを注目したが、
シプレの言葉と
不機嫌をあらわにした
視線が、その注目をそらす。

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