モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜


「沙羅…?どうしました。
具合でも…。」

そっと、頬に触れられて、
沙羅はようやく我に返った。

「あ…ごめんなさい。
大丈夫…です…。」

慌てて顔をそむけて
朔夜から目を
そらそうとするが、
そらした途端に
そむけた沙羅の顔を
朔夜の大きな
手が包み込む。

「…っ…、…。」

「…少し顔が赤いように
見えますね。
また風邪をひきましたか?」

そむけた顔を無理やり
朔夜に向けられて、
再び朔夜を視界に
移した沙羅は、
言葉がでてこない。

朔夜と一緒にいるときに
何度か感じたことのある
落ち着かない空気が
体中を支配してしまって、
沙羅はわけも
わからないまま
固まってしまった。

なのに、何故か
心臓の鼓動だけは
驚くほどうるさく速い。

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