モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

「沙羅…?具合が
悪いのなら無理を
せずに座って…。」

そこまで言いかけた
朔夜の言葉を、
途中から様子を
みていたらしい
二人の従僕が遮った。

「マスター…お嬢様の
前でその格好は、
教育上宜しく
ないのでは?」

「姫乃奥様にばれたら、
何か言われます。
せめてもう一枚
羽織ってください。」

そういって黎明が
差し出した上着を
朔夜が羽織り、
濡れた髪を天明が
乾かし整えはじめると、
沙羅の方もどうにか
正体不明の硬直と
動悸から解放された。

「いくら気を許して
いるからといっても、
年頃のレディの前です、
マスター。」

「もう少し、
気を配っていただか
なくては困ります。」

朔夜の身なりを
整えながら小言を
いう二人に、朔夜は
少し不機嫌そうに返す。

「…お前たちは
姫乃に感化され
すぎです。」

そんな主の様子など
気にする風もなく、
天明は髪を整える
手を止めず、
黎明は沙羅に席を
進めながら答えた。

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