はじめての恋




次の日、私とお母さんと、お父さんは病院に来ていた。

診察を受けた部屋とは違う、個室。
その、静かで落ち着いた雰囲気が何か嫌なものを予感させる。




「これが真美さんの頭の中の写真です」


三浦先生がそう言って大きな写真をホワイトボードに磁石ではる。


見ただけでは何か分からないけど。




「真美さんの頭痛などの原因は、この…黒い影。わかりますか?」



と、写真の一部を指差し聞いてくる三浦先生。



「この黒い影は腫瘍です」




あっけなく発された先生の一言に私の頭の中は真っ白になった。



腫瘍…?


それって、それって…



「ガンってことですか?」



声が震える。




「…はい」





ガン…?
私が?嘘…ありえない。



「でも、治るんですよね?先生。治るんですよね?」




お母さんが三浦先生に聞く。



三浦先生はホワイトボードに貼った写真をジッと見つめてから、私たちの前にある椅子に座る。



「残念ながら、真美さんの腫瘍は悪性です。治ります、とははっきり答えられません」



それは、死の宣告だと思った。


悪性の腫瘍?ガン?

私…後どれくらい生きられるの?





「ただ、今は脳に腫瘍がありますが、他のところへの移転は確認していません。手術を受けてみますか?」





手術…





「それで、真美は楽になるんですか。治るわけではないんですよね」



お父さんが声を荒げる。
お母さんがお父さんの背中をさする。




「全てを取り除く事が出来ても、悪性の場合移転する可能性は高いです。しかし、今後治療をすれば遅らせることはできます」





遅らせる?
進行を遅らせたって、治せないんでしょ?



「先生。私、高校を卒業できますか…?」



私が聞いたのは、それだった。
何より高校を卒業できるか。


それだけは知りたかった。




「…そのために治療方針を我々は考えます。全力を尽くしますから、信じれば扉は開きます」



その三浦先生の言葉は魔法の言葉のように聞こえた。




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