捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 

「……っ」

「……俺のこと、嫌になりましたか?泣くほど、嫌いですか?」

「っ!」


泣いてるの、バレてる……?

何で……


「…………ほんと、俺って単純バカですね。ずっと浮かれてたのがダメだったのかもしれません」

「……?」

「避けるほど嫌われてても、琴音さんを手放したくなかった。だから、今日はずっと気付かないふりをしてました。俺が何も言わなければ、きっとこのまま進んでいけるだろうって。でも……ダメ、なんですよね。そんな俺の甘えとかワガママで琴音さんを縛るのは」


惣介さんの言ってる言葉の意味がわからない。

私こそ単純バカで、惣介さんの言葉を自分のいいように捕らえてしまうんだ。


「……あの日の……、結婚する前に俺と恋愛してみるかっていう“提案”は……取り消します」

「!」


ぽつりといつもより低い声で惣介さんが呟く。

その言葉に、あぁ終わった、と思った。

やっぱり惣介さんは提案した恋愛ができなかったんだって。

……私の一方通行で終わったんだって。


「……琴音さん」


惣介さんが私の手をするりと離した。

自由になった私の手はぶらりと宙にぶら下がり、冷たい風にさらされる。

寒いはずなのに、麻痺してしまったように、何も感じない。

ただ、胸が痛い。

寒さは身体の周りを温かくすればどうにかなるけど、この胸の痛みはどうやったら消えるんだろう?

その方法を私は知らない。

 
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