捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 

ケーキを受け取って惣介さんの元に行くと、惣介さんはフロアマップを見ていた。


「お待たせしました」

「あっ、おかえりなさい」

「……何見てるんですか?どこか行きたいところあります?」

「あ、いえいえ。お昼はどうしようかと。ちょうどいいし、この辺で食べていけばいいかな、って思って見てたんですけど」

「あ!お昼時ですもんね」

「はい。……琴音さん、お腹は……」

「!」


私の顔から目線を下げた惣介さんに、私は慌ててお腹を押さえる。

またお腹が鳴った時のことを蒸し返すつもりだ!、と勘づいた私は、我先にと口を開いた。


「すいてます!絶賛!」

「……くくっ。そんなに強調しなくても」

「う……、だって……」


結局、惣介さんにくすくすと笑われてしまった。

何をしても、言っても、笑われる運命なんだな……もう。

ちょっと悔しくて口をむぅと尖らせると、惣介さんの手がなだめるようにして、私の頭をぽんっと叩いた。


「!」

「じゃあ、食べて行きましょうか。どこがいいですか?」


フロアマップを指差されるけど……私は手に持っていた“あるもの”を、ゆらゆらと揺らした。

実は、出すタイミングをいつにしようか、と家にいる時から悩んでいた“コレ”。

チャンスは今しかない。

 
< 141 / 254 >

この作品をシェア

pagetop