捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
ケーキを受け取って惣介さんの元に行くと、惣介さんはフロアマップを見ていた。
「お待たせしました」
「あっ、おかえりなさい」
「……何見てるんですか?どこか行きたいところあります?」
「あ、いえいえ。お昼はどうしようかと。ちょうどいいし、この辺で食べていけばいいかな、って思って見てたんですけど」
「あ!お昼時ですもんね」
「はい。……琴音さん、お腹は……」
「!」
私の顔から目線を下げた惣介さんに、私は慌ててお腹を押さえる。
またお腹が鳴った時のことを蒸し返すつもりだ!、と勘づいた私は、我先にと口を開いた。
「すいてます!絶賛!」
「……くくっ。そんなに強調しなくても」
「う……、だって……」
結局、惣介さんにくすくすと笑われてしまった。
何をしても、言っても、笑われる運命なんだな……もう。
ちょっと悔しくて口をむぅと尖らせると、惣介さんの手がなだめるようにして、私の頭をぽんっと叩いた。
「!」
「じゃあ、食べて行きましょうか。どこがいいですか?」
フロアマップを指差されるけど……私は手に持っていた“あるもの”を、ゆらゆらと揺らした。
実は、出すタイミングをいつにしようか、と家にいる時から悩んでいた“コレ”。
チャンスは今しかない。