捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。

~1. 渡したいもの

 
~本編「同じ景色を。同じ未来を。」の少し後のできごと。~



***

すごく悩んだ。

結婚を約束しているとは言え、重いと思われるかもしれない。

呆れられるかもしれない。

でも、やっぱり一目惚れした“コレ”を身に付けてもらいたいと思って、決めた。


……あと私に出来ることは、“コレ”を渡すことと……喜んでもらえることを祈ることだけ。




私は隣に座って雑誌を読む惣介さんを、くるくると指を小さく回しながら窺うようにチラリと横目で見る。

あるタイミングをはかるためだ。

そんな私には気づいているはずのない惣介さんは雑誌に載っている食べ物の写真を指で追いながら、「これもおいしそうですね~」とまるで食べ盛りの男の子のように楽しそうに見ている。

……ついさっき、外で夕食をおいしくいただいた上、帰りに目について衝動買いしてしまった“とろりんプリン(柚子ソース付き)”を惣介さんのおうちでいただいたばかりにも関わらず、だ。

あれだけ食べておいて、この細すぎず適度に引き締まった身体……羨ましすぎる。

私はつい、そのセクシーな身体を悶々と頭に浮かべてしまって、いけない!と頭を小さく振る。

っていうか、それよりも!

……どうしよう。

いつ“アレ”を渡そう?

食事の帰り際にさらっと渡すつもりだったのに、惣介さんのおうちに来ることになってしまって、渡すタイミングを完全に失っちゃったし……。

タイミング的には今がいい気はするんだけど……でも……うぅん……

 
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