捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 

「惣介さんって結構身長高いでしょう?私、160ないから羨ましいな~って思ってたんです。高い世界から見る風景って何かいろんな景色が見えて楽しそうで」

「あ、なるほど。でも、20センチくらいならそんなに変わらないんじゃないですか?」

「っ!」


突然近付いた顔の距離。

惣介さんが身体を屈めて私の顔の高さに合わせてきたのだ。

ち、近いんですけど……!

その近さに私は動くことができない。

でも、惣介さんは気にする様子はなく、私の高さから木々を見上げる。


「あ、でもやっぱり違うものですかねぇ。周りの木が高く見えます」

「で、でしょ!?」

「それに……、いつもより琴音さんが近く感じます」

「!」

「なかなかいいものですね」


惣介さんはいつもより近い場所から、私に笑顔を向けてくる。

ドキドキするのと一緒に、ほわっとした気持ちが私を包み込む。

あ。いつもより惣介さんの顔が明るく見える。

いつもは惣介さんは俯く形になってるせいで、その顔に影を落としてしまうから。

……やっぱり何となくだけど、惣介さんって整った顔をしてそうな気がする。

そんな思いで惣介さんのことをじっと見ていると、惣介さんがひょいっと元の高さに戻った。

 
< 67 / 254 >

この作品をシェア

pagetop