捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 

“女神”と名付けられた鍾乳石をじーっと見ていると、背後から惣介さんのくすくすという笑い声と共に声が聞こえてきた。


「……楽しんでもらえてるみたいで良かったです」

「え?」

「……実はここに来たの、ちょっとした賭けだったんですよね。だから勝負、って言ったんですけど」

「賭け……?」

「はい。普通、こんな石しかない場所に連れてこられても、って感じだと思うんです。琴音さんが自然が好きだとは言っても、楽しんでもらえないかも、って自信なかったんですよね」

「……楽しめない……?」

「はい」


惣介さんは少しだけ困ったように笑っているけど。

私は首を捻るばかりだ。

何でそんなことを思うんだろう。

全くそんなことはないのに。


「それはないと思います。……いや、ないって断言できます」

「え?」

「惣介さんが一緒なら、たぶん、何もないような殺風景な場所でも私は楽しいんです」


だって、ただおしゃべりするだけで楽しいんだから。

場所が変われば、もっと新鮮で、もっと楽しいはずだ。

 
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