ロフトの上の冷たい毒 星のない漆黒の空の下


中堅の医薬品製造メーカーの営業所。
4階建ての小さなビル。

1階は薬品倉庫だ。

私は営業物流課で、周りは男性ばかり。妻帯者か、中年以上の独身者。

ルート営業をする彼らのアシスタント的役割をしている。


女子正社員はわずか2人だけだった。
ありふれた紺のベストとボックススカート。
それを着ているのは、私と笹木羅夢だ。


もっともパートタイマーを入れれば、女性従業員は10倍ぐらいの人数になる。


『パートさん』と呼ばれる彼女たちは自前のエプロンを着用する決まりだった。


薬品倉庫で、客先に配送する薬品をカートに載せて選び出す『パートさん』は自分のライフスタイルに合わせて働く。


小さな子どもがいるので、午前中だけ。
扶養控除を受けたいから、週三日まで。

小遣い稼ぎの彼女達を、私はちょっと羨ましく思う。


フルタイムで働く私だって、17万ちょっとの給料で、ボーナスでなんとかささやかな贅沢が出来るのだ。


パートさんはパートさん。
正社員は正社員。

この会社は、そんな区切りだけはしっかりある。




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