彼は私を狂愛した。

そして持っていた手に力を加え



思い切り引っ張った。



___ベリッ



ポタポタ…




「ふ、ふはははは…


痛いね、これ…」




慧兒が目を見開いて笑い


自分の爪を面白そうに見ている。



「ぁぁあああ…ゲホ…」



吐き気がする。


慧兒の親指は爪の奥の肉までも切れていて


ピンクの皮膚が一気に赤に染まった。



「魅音…これお前のせいだからね。


俺を裏切るたびに



俺はコワレテク…」





「やあああぁぁ…!もうやだ…やめて…!!」



私が叫ぶと慧兒は血だらけの親指を私の口の中に入れた。




「んぐっ…」




口の中に広がる新鮮な鉄の味。



「……じゃあ、俺を悲しませないでよ」



ガタガタガタ…



体がおかしくなりそう。




「は、は…い…」




「うん、いい子」



そう言って慧兒は笑い私の頭を左手で撫でた。

< 148 / 235 >

この作品をシェア

pagetop