沖田総司は恋をする
お互いに謝罪を終え、いつも通りの朝食が始まる。

…いや、いつも通り、とはいかなかったかもしれない。

僕も奈津美さんも、どこか相手の出方を窺っているような雰囲気。

へきるさんだけが、平然と二杯目の珈琲をおかわりしていた。

…朝食が終わる頃。

「ちょっと提案なんだけど」

食器を片付けながら、へきるさんが言った。

「察するに、二人ともお互いに対して申し訳ない気持ちでいっぱいな訳ね?」

…この人の洞察力には、時々目を見張るものがある。

確かに謝罪こそ終えたものの、僕はまだ奈津美さんに対して申し訳なく思っていた。

気にかけてくれていた事も知らず、あのような暴言を吐いてしまった訳なのだから。

「だったらさあ…二人ともデートしてくれば?」

「は!?」

「え!?」

僕と奈津美さんは、それぞれにへきるさんの発言に目を丸くした。

「な、な、何故そのような事になるのです!?」

「だって」

へきるさんはクスクス笑う。

「お互いに、相手に申し訳ないなと思ってるんでしょ?で、仲直りしたい訳でしょ?仮にも男と女な訳だし。そういう時はデートが一番よ」

そんな理屈は理解できかねる。

「そもそも逢引などというものは、好き合っている男女がするものでしょう!別に僕と奈津美さんは…」

「きいたぁ?奈津美ちゃん。沖田さん、奈津美ちゃんの事好きじゃないんだってぇ」

へきるさんがからかうように言う。

しまった、と思って恐る恐る見ると。

「……」

酷く落ち込んだ様子の奈津美さん。

「あぁああ…いや、そういう意味ではなくてですね…」

僕は一人でしどろもどろになっていた。

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