ヒールの折れたシンデレラ
(義理のお姉さん?呼び捨てしてたのに?)

軽く頭を下げたが千鶴のモヤモヤはどんどん大きくなっていく。

(それに私のこと秘書って……たしかに間違いではないけど)

「じゃあ俺たち急いでいるから」

千鶴は宗治のその言葉に我に返る。

さっさと歩き始めた宗治に義姉と言われた妃奈子が「待って」と声をかけた。

しかし宗治の足は止まらない。

千鶴はとりあえず頭をさげて宗治の後を追った。

長い脚でどんどん歩かれると千鶴は小走りでないと追いつけない。

千鶴はやっとの思いで宗治に追いつき左手をつかんだ。

すると宗治の歩く速度は緩まり、千鶴が握った手をぎゅっと握り返してきた。

ぎゅっと――力強く。

宗治のその態度をみて千鶴は何も聞けなくなってしまう。

おそらく二人の間には何かしらあるのだろう。

ただ今は何も聞かずに、千鶴は宗治の手をきつく握り返した。

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