ヒールの折れたシンデレラ
「宗――」

「ごめん。あんな顔してるのに一人にして」

そう言うやいなや、大きな胸に千鶴を抱きしめていた。

「千鶴が何か困っていることも、本当は一緒にいたいのに意地はってることも気が付いてた」

ぎゅうぎゅうと痛いほど抱きしめられる。

「なんか俺のほうが必死すぎて悔しくなって子供みたいなことした。ごめん」

千鶴の髪をなでながら宗治は謝罪した。

それにこたえるように宗治の腕の中で千鶴が首を左右に振った。

「意地はってごめんなさい」

小さくつぶやくと宗治のしなやかで男らしい指が千鶴の顎をとらえた。

そして目があった瞬間二人の唇が重なる。

「んっ……ふっ……んん……」

チュッ、ちゅっというリップ音を立てて、初めからめまいがするような激しいキスに千鶴の体からは完全に力が抜けて玄関だというのにその場に倒れこみそうになった。

それに気づいた宗治がぐっと腕に力を入れて千鶴を支える。

唇がいったん離されるといつかのように膝裏と背中に手を回されて抱え上げられた。

「ベッドは?」

「あっち、だけどいきなり――」

「俺がこれ以上待てると思う?」

そう言ったきりずんずん歩いて部屋の奥に入っていく。

千鶴の部屋は広くない1LDKだ。ベッドの場所など聞かなくても部屋に入ればすぐにわかる。
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