ヒールの折れたシンデレラ
溜息一つついて仕事にとりかかろうとしたときに後ろから小さな拍手とともに声がかかる。

「いや~お見事!」

振り返るとそこには、宗治が立っていてにこにこと笑顔でこちらを見ていた。

(一部始終見ていたってこと?なら電話代わってよ!)

「常務の大切な“お友達”の彩奈さんからお電話でした。ご連絡をお待ちのようでしたよ」

怒りのあまり厭味ったらしく言う。

「いいの、いいの俺が話すことなんてないから」

ニコニコしながら、答える宗治に千鶴はますます苛立つ。

葉山は本来ならば新人であってもきちんと意見をのべる社風だ。上司だろうが部下だろう議論を活発にかわす職場である。

千鶴もいままでそういう環境の下仕事をしてきたので、上司だろうが言いたいことははっきりと伝える。

(女性問題の処理まで秘書の役目なの?)

ただ相手は取締役だ。これ以上会話をして思っていることが口か出てしまっては困ると思いパソコンに向かって仕事をしはじめた。

「やきもち焼いてる?かわいい~」

背後からのぞき込まれて、千鶴の我慢の糸が切れる。

「いい加減にしてください。自分の女性関係の“お片付け”ぐらい自分でなさったらどうですか?」

ギロリと睨む千鶴に華子が「んまぁー!」などと声を上げている。

「優秀な“お片付け上手”な秘書がいるから俺がわざわざやらなくても大丈夫みたい」

肩をすくめて部屋から出ていく。

その軽い態度にますます気分を害した千鶴はパソコンのキーボードを大きな音でたたいた。

「う~ムカつく!」

小さくつぶやいたその声を勇矢が聞いて、肩を震わせていた。
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