ヒールの折れたシンデレラ
千鶴は目の前にあるミルクティのカップを両手で持ち自分が与えた振動で波打つ液体を見ていた。

ここのところ色々あって体は疲れているのに一向に眠れない。一つため息をつくと名前を呼ばれた。

「瀬川さん――」

顔を上げるとそこは呼び出した相手、妃奈子が立っていた。

「急に呼び出してしまってすみません」

すぐに立って頭を下げた千鶴に妃奈子は笑顔を返した。

妃奈子が注文したホットチョコレートがテーブルにのると千鶴は話を始める。

「宗治さんとお兄さんのことなんですが、私にはもうなにもできなくなってしまいました。ごめんなさい」

テーブルにつきそうな勢いで頭を下げる。


「いきなりどうしたの?」

妃奈子の綺麗な手がテーブルの上の千鶴の手に触れる。

「私、本当は妃奈子さんのことが心のどこかで許せませんでした。だけどお兄さんとの和解が宗治さんの心のわだかまりを取り除くことができるなら、努力してみようと……」

妃奈子の顔が曇る。
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