ヒールの折れたシンデレラ
すると今度はノックの音が聞こえる。

そこには華子が立っていた。

「お取込み中申し訳ありませんが、至急の要件と判断いたしましたので失礼します」
綺麗に頭を下げる。この現状をみてもひるまないのは、お嬢様として育ってきた華子の肝のすわったところだ。

「先ほど瀬川さんから課長宛てに伝言を―――」

「電話があったのか?」

声を出したのは宗治だ。

「はい。『全部うまくいくから心配しないで』だそうです」

「千鶴がそう言ったのか?」

「はい」

「アイツまさか一人で勝手に……」

宗治の顔が青ざめる。

すっと華子が資料の一式を勇矢に渡す。

勇矢はその資料にさっと目を通した。

それは千鶴が見つけた経理課のデータだった。

「まぁ彼女ならやりそうですけど」

勇矢から渡された資料を確認して、宗治の表情が険しいものになる。

すぐに宗治スマホを取り出し電話をかけたが、千鶴は電源を切っているのかつながらない。

「くっそ」

スマホを握り締める宗治。
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