ヒールの折れたシンデレラ
“ガシャーン”

勇矢が話終えるか否かというところで、ドアの外から大きな音が聞こえる。

急いで勇矢が扉を開けるとそこには足元に割れたコーヒーカップとわなわなと震える園美が立っていた。

「日下……日下専務がドイツって……どういうことですか?」

震える声をだし勇矢を見つめる。

「立ち聞きしておいて質問ですか?」

見下すような冷たい勇矢の視線にも園美はひるまなかった。

「ドイツって、しかも家族と……」

震える園美の焦点がさだまらない。

「日下は今日の夜のフライトで家族とドイツに逃げるつもりだ。君を捨ててね」

宗治の冷たい言葉に園美はその場に崩れ落ちる。

「そんなっ……だってこれがうまくいったら、奥さんと別れて私と結婚してくれるって……」

「まんまと利用されたんだな。アイツは妻と別れる気なんてさらさらなかったぞ。ドイツに家族と住む家まで購入してる」

園美は床に座りこんでただ首を左右に振るだけだった。
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