ヒールの折れたシンデレラ
「そうか……」

「驚かないんですか?」

「あぁ、私がやらせたんだから今更驚くはずがないだろう?」

あっさり罪を認めた日下に千鶴はひるむ。

「ただしこれは私じゃなくてあの若造の仕業として社内とマスコミに流れるように手配してある。イケメン御曹司が会社の金を横領だ。マスコミの好きそうなネタだろう?」

「そんな……!」

目の前の男の表情は醜悪としか表現しようがない。

「一体あなたは何をしたいんですか?どうして……あなただって葉山には思い入れがあるはずです。それなのにどうして―――」

「どうして……だと?俺がどんな思いで今まで葉山でやってきたのかお前にわかるか?」

いきなり声を荒げ始めた日下に千鶴はたじろぐ。

「私だって自らの人生を犠牲にして葉山につくしてきたさ、葉山の親戚筋の好きでもない女と結婚して。しかし与えられるポストは専務止まり。かたや馬鹿なお坊ちゃんが後継者だと?そんな話“はいそうですか”と聞けると思うか?」

吐き捨てるような言葉に千鶴は眉を寄せる。

「宗治さんは……常務は専務がおっしゃるような方ではありません。精神誠意仕事をされています。会社のことや顧客のことをいつも考えて……」
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