ヒールの折れたシンデレラ
「うるさい!お前だって遊ぶだけ遊ばれて捨てられたんだろう?いつまでアイツにしっぽ振るつもりなんだ?あぁ?」

目の前のテーブルを足でけり大きな音がでる。千鶴の肩がびくっと揺れた。

「そんなにあの男が大事ならお前にチャンスをやろう」

「チャンス?」

「あぁそうだ。お前がこの書類にサインをすればアイツの名前がマスコミに流れるとこはなくなる」

投げつけられるように渡された資料を見ると、そこにには横領の事実とその罪を認めるということが書かれていた。

「これって……」

「見ての通りだよ。あの横領をお前がやったことにすれば、アイツは無罪だ。どうだ?」

書類を持つ手が震える。汗ばんだ手で握られたそれはしわを寄せていた。

「これにサインさえすれば彼には何もしないんですね?」

「あぁ。ただお前は間違いなく横領の罪で訴えられる。その覚悟はできているのか?」

手が震える。それでも千鶴は自分のバッグからボールペンを取り出し、テーブルにかがみこむようにしてサインをし、日下に差し出す。

日下はそれを手に取ると意地の悪い笑みを浮かべる。
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