ヒールの折れたシンデレラ
「そうです。私と常務はもう関係ないんです」

自分で紡いだ言葉が自分の心をえぐる。泣きそうになる自分を励ます。

『俺は関係ないなんて言わせない。退職願は受理されなければ意味をなさない。残念だけど千鶴の退職願は今日俺の手で破棄された』

「な……んで、そんな勝手なこ――」

『勝手なのはどっちだ。何も言わずにどこに隠れてる?』

「距離をおこうと言ったのは常務です」

千鶴も反論する。

『常務じゃなくて宗治だ!』

「とにかく退職願はもう一度郵送します」

『あぁ好きなだけ送ると言い。そんなもの中身もみずに破棄だ』

これ以上言い争っていても無駄だ。そして何も変わらない。

「もう好きにしてください。私は明日から出社しませんから無断欠勤でもなんでも。そうすれば社内規定によりクビになりますからね」

『あぁ、好きにさせてもらう。絶対探し出してやる』

千鶴は強引な物言いながらも、宗治がまだ千鶴を求めていてくれることが嬉しかった。

しかしそんな自分を心の奥底に閉じ込める。

(一緒にはいられない。彼には私よりもふさわしい人物がいる)

千鶴はスマホの通話を終了して電源まで落とした。

(これでいいの……これで)

千鶴は瞼を閉じて必死で眠ろうとしたが、何度寝返りを打っても記憶から彼がでていくことなどなかった。
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