ヒールの折れたシンデレラ
「時間がないからすぐ準備して」

「え?私も?」

「今から会う人は俺じゃなくて千鶴に会いたがってるから」

不思議に思いながらもせかされて準備する。持ってきたボストンバックと先ほど買ったスーパーの食材を持って千鶴は宗治の車に乗りこんだ。

車の中で宗治は何件かの電話を処理していた。

(相変わらず分単位で仕事してるんだな)

そんな中、こんな山奥まで自分を迎えに来てくれたと思うと胸が熱くなる。

イヤホンマイクで真剣に運転と仕事をこなす宗治に思わずみとれてしまう。

またこんなに近くに戻れたことがうれしい。

――本当は嬉しかった。

でも素直に返事ができない。

宗治と兄の竜治と妃奈子との関係はどうなったのだろうか……。

もしいまだに引きずっているならばそれを間近で見続けるのはつらい。

それに宗治と結婚するということは一緒に葉山を背負っていくということだ。

そんなこと両親も後ろ盾もいない千鶴にできるのだろうか?

宗治だって周りから祝福されて結婚したいはずだ。

家族のことではつらい思いをしてきたのだから……。

千鶴は自分との結婚を手放しで喜んでくれる人がどれほどいるだろうかと考えてますます返事ができなくなっていた。

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