ヒールの折れたシンデレラ
「階段の件は本当に申し訳なくて。怪我をさせるつもりなんてなかったんです。日下専務に何度もできないって言おうとしたんですけど、捨てられると思うと怖くてできなかった」

園美の顔は涙でぐちゃぐちゃだ。後悔の色がにじみでている。

「もういいよ。たくさんの人に迷惑をかけたんだから許すとは言えないけれどでも反省してるのも分かった」

「許してもらえるとも思っていません。ですが話を聞いてもらえてうれしかったです」

「これからどうするの?」

「葉山にはいられませんから、実家に帰ります。常務のはからいで実家との取引は続けてくれるそうなのでしばらくゆっくりして今後のことを考えてみます」

そういうと顔をあげていつものやさしい笑顔を浮かべ「お幸せに」と宗治と千鶴に言い残してその場を後にした。

「彼女も被害者ですよね」

呟く千鶴に宗治が言う。

「だからといって許さることじゃない。千鶴がもし俺に言われたら同じことをするのか?」

左右に首を振る。

「そうだな、千鶴だった俺の頭にげんこつ一つ落として“ばかなこと言わないでください”ってどなるんだろうな」

笑いながら会議室を出ていく。

(宗治さんは絶対そんな卑怯なことしないじゃない)

そんな風に思いながら急いで宗治の後をおった。
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