ヒールの折れたシンデレラ
十五階に到着して秘書課の前に来るとそこには、勇矢、華子と艶香が待っていた。

「あらまぁ長いお休みをしていたはずなのに、どうもやつれたように見えるのは私だけかしら?お仕事たまってますのにそんな服装で出勤だなんていい度胸ですわ」

変わらない華子の言い方に思わず笑みがこぼれそうになる。

「一人減って仕事大変なんだからさっさと準備して手伝って。私自分の仕事以外はしないんだからあなたがやらないと誰がやるのよ」

艶香もいつも通り肩にかかる髪の枝毛を気にしながら話す。

二人の変わらない態度が千鶴の心を安堵させる。

「あ、そうそう。今日夜空いてる?異業種交流会という名のコンパがあるの。遠山さんいなくなったから一緒に行く人いなくてこまってるんだけど……」

艶香の誘いを宗治が間髪入れずに断る。

「悪いが、こいつはまだ特別任務が残ってるんだ。こい」

宗次にひきずられるようにしていく千鶴を秘書課の面々が明るい笑顔で見ていた。

「どうしてあんな子が……」

ぽつりと華子の心の声が口から洩れた。

それを聞いて勇矢が答える。

「きっとあのしなやかな強さにひかれたんですよ」

「あぁ、見かけによらず頑固だしね」

艶香も同調する。

「ますますわかりませんわ。まぁ常務に見る目がなかったんですわね」

強がりともいえるセリフを吐いた華子。

「そういうことにしておきましょう。さあ人が減って大変なんでしっかり働いてください」

勇矢の言葉に艶香は心底嫌そうな顔をしていた。
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