ヒールの折れたシンデレラ
「でも宗治さんが妃奈子さんを嫌って別れたわけじゃないでしょう?」

「痛いとこつくな……。確かに俺は振られたよ。あの頃葉山の仕事をこなすだけで精一杯で正直妃奈子の心が離れていってることなんて気が付いてなかった。身内や取引先からのプレシャーも半端なかったし、まだ青かったんだろうな。余裕がなかった」

何もないテーブルの上を見つめている。

「気が付いたら妃奈子は兄貴の手をとってた。俺は自分を正当化するために妃奈子と兄貴を恨んだんだ。頭の中ではわかってたんだ。兄貴や妃奈子が悪いわけじゃないって。でも相手を攻撃することで自分が悪くないと思おうとしていた。最初はそうだった……」

「最初は?」

「そう。だんだん冷静になると自分の落ち度とか色々みえてくると今度はそっちのほうがトラウマになってきたんだ。好きな女も幸せにできない。相手を責めることでしか自分を正当化できないなんて、次に真剣に誰かと向き合って同じ失敗をするのが怖かった」

自嘲気味な笑いを浮かべる。
< 208 / 217 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop