ヒールの折れたシンデレラ
お払い箱になった宗治が、美波に泣かれないようにゆっくりと勇矢の隣に立つ。
「あんまりしつこくして逃げられるなよ」
勇矢のセリフに「失礼な。愛情表現が豊かなだけだ」と宗治が眉を寄せた。
「どうして彼女だったんだ?」
根なし草のようにふらふらしていた親友が彼女を選んだ理由を勇矢は尋ねた。
「なんだろうな。最初は結婚しないためのカモフラージュにもってこいだとは思ったんだ。だけど、決して背伸びはしてないのに常にまっすぐ上に伸びようとしていることろとか、弱いようで強いしなやかさとか、一人で何でもやってしまいたがる危うさとか、そういうところが全部いちいち俺のツボで――」
「わかった。これ以上は聞かない。お前が幸せだっていうのはわかったから」
勇矢に話ながら宗治は思った。
これから先、笑顔だけじゃない。背中を向けて眠る日もきっとあるだろう。
だけどどんなに曲がった川で、岩がごろごろしていても、まっすぐな川でおだやかでも千鶴と一緒なら、その川を流れる水のように、形を変えながら離れずずっと流れていける気がする。
たとえ千鶴のヒールが折れて歩けなくなっても、おぶって前にすすめばいい。
その重ささえもきっと幸せに感じるだろう。