ヒールの折れたシンデレラ
そもそも今日はこの間のお好み焼のお礼にという話だった。

それだけなら相手が少しばかり代わろうと、宗治にとっては問題ないはずだ。

「俺が今日一緒に食事したいと思ったのは、君だ」

宗治のその言葉に千鶴の心が震える。

「私と……ですか?」

「そうだ。楽しみにしていた俺の気持ちはどうなんだ?遠山さんの気持ちは慮れるのに、俺の気持ちはこれっぽっちも考えてないじゃないか」

前を向いて歩きながら言う宗治の声は冷静だけれど確実に千鶴を責めていた。

「君は、俺が誰と食事していても誰と仕事の後一緒に過ごしていてもまったく気にならないんだな」

「そんなこと……!」

ないと続けたい。だけどそれを伝えてどうなるというのだ。

一体宗治は自分に何を言わせたいのだろう。千鶴は困惑していた。

誘われてうれしかった。園美とできれば代わらずに自分が行きたかった。そう伝えていいのだろうか……。

「俺は……俺は気になる。どうして今日来てくれなかったんだろう。君が男の車から降りてきて名残惜しそうに見送っている姿を見たときは、相手は誰だろう。その相手とだったら二つ返事で食事にいくのかとか、もう普段の自分では考えられないようなことをずっと」

宗治が一呼吸する。

「ずっと考えてる……君のことを」

そこまで言うと、立ち止まり千鶴を下ろしてくるりと振り向き向かい合う。
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