ノーチェ



「よく覚えてねぇんだよなぁ。啓介曰く、バーの外で寝てたらしい。」

そりゃ風邪も引くわ、そう言って薫はペロリとお粥を間食してしまった。


そのまま水を一口飲み込むと、粉薬を手に

「俺、粉薬飲めねぇんだけど。」

なんて言いながら顔をしかめる。




「…ちょ、ちょっと待って?」

そんな薫とは反対に
あたしは上手く回らない頭を動かして彼の言葉を反芻する。



覚えてないって…。
まさか、あのキスも?

「ほ、本当に全然、覚えてないの?」

「……最後の方は、あんまり。」


嫌々粉薬を飲んだ薫はあからさまに苦い顔をしてあたしを見た。



「何?俺、何か変な事言ってた?」

「…え?あ、ううん!べっ別に何も!」

「そ。」


慌てて首を横に振ったあたしに、薫は何事もなかったかのように再びベッドへと潜り込む。



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