ノーチェ


「…昨日の夜からさ、啓介と居たんだけど…。」

「うん…。」

やっぱり、啓介くんの事か…。


予想してたとは言え、その名前が出て来ない事を願っていたのに。

願いはやっぱり、神様には届かないの?




ぐすっと鼻をすすった菜月は、カバンからハンカチを出して濡れた頬を拭いた。


次第に混み始めた店内を気にしながら
菜月はそっと話を切り出す。


「…ねぇ、莉伊。あたしね、本当に啓介が好きなんだよ…。」

「……わかってるよ。」


ちゃんと、わかってる。

菜月の気持ち、あたしはちゃんと知ってるよ。



「…だから、あたし…、どうしたらいいか…っ。」

まだ言い終えないうちに菜月はまた涙をテーブルに落とす。



そんな菜月に
あたしは何も言葉をあげられない。



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