ノーチェ


そのメールに、無意識に口が緩んでく。


そんなあたしを見て、菜月が

「嬉しい?」そう言って顔を覗き込んでニヤリと笑った。



「…そ、そんなんじゃないし!」

「またまたぁ。素直じゃないんだから~。」

「菜月っ!ほら、仕事仕事!」


はいはい、と適当に返事をする菜月に笑いながら溜め息をついて、あたしも再び帳簿に視線を落とす。


アクアで披露宴をしたあの日から3日後、薫はイタリアに料理を勉強する為に

『修行』と名目を立てて飛び立って行った。


だけど『修行』と言ってもそんなに長い期間いく訳じゃない、と説明してくれた。

本場のイタリアンの味を勉強したいらしい。


今勤めてるレストランに無理を言ってお願いしたんだと、この前電話で話していた。


約一ヵ月の『修行』

相変わらず、薫らしい。



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