ノーチェ


その言葉に、にっこりと笑顔を見せた菜月は

「いーえー、塚本夫妻のお願いですから。ねぇ、啓介?」

そう言って、奥で段ボールにガムテープで蓋をする啓介くんに視線を向ける。



「あぁ。何なら、菜月も貸してあげるよ。」

ふっと笑った啓介くんの言葉に

「あー、それはいいや。」

と、首を振るあたし。



「ちょ、二人とも酷くない!?もー、薫くんに言い付けるから!」

あはは、と笑い声が小さなあたしのアパートに響き渡る。






あの日。

薫に気持ちを伝えたあの日から、あたし達は一年半の交際を経て、めでたく籍を入れた。


二人の仕事柄、挙式はまだ当分、出来そうにないけど
それでも幸せな毎日を送ってる。



でも、一人で感じる幸せじゃない。

これからは、二人で幸せを感じる人生を、共に生きるんだ。



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