【短編】勿忘草−花に託す愛言葉−
隼人は立ち上がり、ベランダへと歩いていく。
少しの間、夜空を眺め……そして振り返り、
「凪咲、真っ赤なバラの花束欲しいって言ってただろ?」
少しはにかんだ笑顔を向けて、
「それはさすがに無理だったから、その花で我慢して?」
そう言って、再び視線を逸らして外を見つめた。
覚えててくれたんだ……。
「隼人ーーっ!!」
持っていた鉢植えをテーブルに置き、立ち上がって隼人へと駆けて行く。
ドンッ!!
「ククッ……凪咲、今日二回目」
勢いよすぎてガラス戸に体を打ち付けられた隼人は、しょうがないなぁって感じで優しく抱き締めてくれる。
私はそれに応えるようにギュッとしがみついた。