Rhapsody in Love 〜約束の場所〜

24 江口とのデート




 薄暗い照明の中、所々にネオン管の飾りのある店内を案内され、みのりは椅子に腰を下ろした。


「澄ちゃんは、まだ来ていないみたいですね。」


 マフラーとコートを脱ぎながら、予約席のプレートが置かれている席に、澄子がいないことを確認する。


「まだ、6時にはなってないからな。」


 江口は腕時計をチラリと見た。
 江口は、吹きっさらしのグラウンドの風を防いでくれていた、お決まりのカンタベリーのダウンのロングコートを脱ぎ、同じくカンタベリーのウインドブレーカーといういつもの姿になった。


 みのりがキョロキョロと店の中の雰囲気を確かめていると、


「この店、今度組合の忘年会で使おうかと思ってて、どう思う?」


と、江口はみのりの意見を訊いた。
 でも、みのりは思わず顔をしかめてしまう。

 店内はテーブル席よりも、どちらかというとカウンターの方がメインで 、レストランというよりもバーやパブといった雰囲気だ。カウンターの向こう、 様々な酒が並ぶ棚にテレビが置かれ、ロックバンドのプロモーションビデオが大音量で流されていた。


「いやー、ここは…。ご年配の先生方には、どうでしょう?」


 店の雰囲気にあっけにとられながら、みのりは首をひねった。


< 602 / 743 >

この作品をシェア

pagetop