Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
25 淋しい冬休み
みのりは急いでいた。
今日はこれから、遼太郎の個別指導をすることになっている。
遼太郎は、そのテーマが難しすぎるのか、卒業レポートの進捗状況が芳しくなかった。日当たりがよく暖かいから…と、特別教室棟のあの空き教室で、遼太郎が待っているはずだ。
みのりは冬休みにもかかわらず、センター試験組の生徒の個別指導を午後の間中ずっと行っていて、それに思いのほか時間がかかってしまった。
職員室の机に戻って、「環境の歴史」に関する資料をかき集めて、特別教室棟へと急ぐ。久しぶりの遼太郎との個別指導に、みのりの気持ちは逸っていた。
教室のドアを開けると、遼太郎は窓辺に立っていた。
暖かだった日は既に沈み、燃えるような夕焼けが空を覆いつくしているのが、どの窓からも眺められた。
遼太郎はその赤い光の中で、シルエットになってその姿が浮かんでいる。
「狩野くん、遅くなってごめんね。」
みのりが声をかけると、遼太郎は無言のまま振り返った。
みのりは、少し離れて遼太郎の隣に立ち、圧倒的で美しすぎる夕焼けの空が赤から紫へと変化していくのを、しばらく一緒に見守っていた。