ヴァージン=ロード
「こちらこそありがとう。今日は楽しんでいってくださいね」
「ああ、君も」
辞去した白木さんと別れ、私もそのあと数名から声をかけられて会話を交わしていた。
その時だった。入口の方で、女性の黄色い歓声が聞こえてきた。有名なモデルでも入ってきたのだろうかと思ってそちらを見て、私は言葉を失った。
背の高い、短髪の男性が一人。パーティスーツの上からも一目でわかる、鍛え上げられた肉体、人の目を引く精悍さ――どこかで見たことがある顔だ。
まさか……と思っていたところに、その男性が人をかき分け、颯爽と私のところまでやってくる。
「遠いところからでも、やっぱり目立つね、ISAKIは」
聞き慣れた声で紡がれる、聞いたことのない口調に、私はぽかんとするしかない。ついでに言えば、顔だって私の見知ったものじゃない。男前だ。
「コータ、さん……?」
「コータ!?」
ちょうど戻ってきた良と声がはもった。良を伺えば、ぽかんと口を開けて間抜けな顔をしている。大体私も似たような顔をしているに違いない。
そんな中、イケメンに変身したコータさんだけが余裕の笑みを浮かべていた。