雪どけの花
夕暮れの景色
「高村はどの辺りを捜したんだ?」

「オレはこの南校舎内を一通り見て回った」

「…じゃあ、中庭から校舎を見上げてみてくれよ」

「中庭?」

高村は訝しげな顔をした。


「いいから!!」


「分かったよ。じゃ、後でな」

僕のキツい口調に驚いたのか、彼は言われるまま慌てて走っていく。

心当たりがあるとすれば、1つ。

もし彼女が屋上以外の場所で夕日…もしくは夕暮れの景色を眺めているとすれば、もうあの場所しかない。


高い位置で、校内からそれらが見れる場所―――非常階段だ。


ただ非常階段と言っても、この学校は過去に建て増しを幾度となく繰り返してきた為、複雑でそれらはあちこちに点在している。

校舎の中を通って1つ1つ当たっていたら時間がかかり過ぎるので、高村には中庭に出てもらった。

あそこからなら、殆ど全ての非常階段を見渡す事が出来る。

万が一動きがあれば、発見するのも早いだろうと思ったのだ。

そして僕は廊下を走りながら、横目で外の高村を確認しつつ西側校舎の第2非常階段へと向かう。

そこだけは中庭から死角になる場所だから。

もし他の所で何かあれば、高村が何らかの反応を示すだろう。


僕は勢いよく第2非常階段のドアを開けた。

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