雪どけの花
先に階段を下りていく高村の背に、僕は消しゴムの事を思い出して尋ねた。

「倒れる前に誰かの消しゴムを拾ったんだけど、どうなったか知ってるか?」

「消しゴム…?…あぁ、手に握りしめてたやつね。あれ、大原のだったらしいから返しといた」


「………」


また大原の名前か。


夢とはかなり状況は違ったが、キーワード的には当たっている。

高村と会う事、消しゴムが大原のものだった事、そして不可解な彼女の行動。


ダメだ。


夢にこだわり過ぎて、つい悪い方にばかり考えてしまう。


…いや、待てよ。


もしあの夢が何かを《暗示》しているのだとしたら、屋上ではないにしろ別の似たような場所で、とんでもない事を考えているのかもしれない。

不安が渦巻く。

とにかく、ここは別行動の方がいいだろう…僕はそう判断した。

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