まだ知らない愛。
視線
「乗れ」
「…」
「遅刻するぞ」
「あの…」
「あ?」
「なんで車なの?」
学校へ行くため、マンションを出た私たちの前に遠慮なく止められている黒い車。
しかも普通の車じゃない。車に疎い私でもわかる。これって…ベンツだよね?
夏の太陽の光を浴びてギラギラ光るありえないくらい車高の低いベンツ。
「嫌か?」
「嫌っていうか…なんで車?」
「めんどくせぇ」
「え?」
「朝はだるいから歩くのがめんどくせぇ」
…成程。
確かに今も不機嫌なのかただ眠いのか分からないような顔で開かれた車のドアを持っている。
「いいから、早く乗れ」
「あ、はい」
簡単に納得した私はその車に乗り込み、私の隣に座った瞬さんが「出せ」と言うと車は静かに動き出した。
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