まだ知らない愛。
誤解
瞬さんの体は微かに揺れていて、すぐそばで聞こえる瞬さんの鼓動は乱れているような気がした。
「それから俺と綾芽は付き合うようになった」
「…」
「でもある日突然、綾芽が別れを切り出してさ、翔のことが好きだって言ったんだ」
「どうして?」
「分からねぇ。でも、翔に聞いたら付き合ってるって言ったんだ…」
「綾芽さんには理由とか聞かなかったの?」
「聞かねぇよ。聞く資格なんてなかったから」
「資格?」
「あぁ…、その頃俺には好きな女が出来たからな」
綾芽さんと付き合っていながら好きな人が出来た瞬さん。
恋にはいろいろ形があるんだなと初心者の私は深く知ることになるけど…。
「いつの話なの?」
確か奏多さんが亡くなったのは二年前。
思い出すように遠くを見る瞬さんが少しだけ微笑んでいる。それは見なくても声でわかった。
「一年前だ」

ということは綾芽さんとはそこまで長く付き合わなかったってこと?
それでも一年間ずっと瞬さんは綾芽さんの傍に居たんだ…。
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