生涯の人… 〜Dearest〜
遥の様子がおかしい事。

最初から気付いてたよ。



今日は優しいとは違う…杏奈に何か求めるような態度。

何があったの…?


何を抱えてるの…?







「遥何かあった…?」


遥の煙草を吸う動きが止まった。

ただ正面を見つめて、瞳の奥に不安を隠し持ってるのがわかる。



「杏奈に何か話があったんじゃないの?…だから連絡してきたんでしょ?」

「……。」










見ちゃった…。

ソファーに寄り掛かる遥の横顔。



淋しいような、悲しいような。





いつもの遥じゃない。








そんな顔初めて見るよ。

貴方の…弱くて脆い部分。



「俺…」

「ん…?」

「俺…、自信なんてねぇよ。」

「…うん。」

「いつも不安が取り巻いてるし…、弱い自分を隠してるだけ。」

「…うん。」

「俺…。…杏奈にこんな事聞くの酷い男ってのはわかってんだけど…。」






遥が持ってるカシスオレンジから水滴が落ちた。

ポタポタ、ポタポタ。


まるで遥が泣いてるみたいに床に染み込んでく。








杏奈はね…。

悲しい事って無い事には出来ないと思ってる。



不安があって、悔しさがあって、悲しみがあって…。





それで初めて人って強くなれると思うから。



ただ…。









遥がその感情に直面した時は、力になれればって思うんだ。


杏奈がそうして貰ったように…。



貴方の支えに。





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