シェリー ~イケない恋だと、わかっていても~
ホテルからスキー場までは結構近くて、あっという間に目的地へ到着してしまった。


「さーて、彩月!とりあえず私が教えるね!」
「うん、ありがとう」
「(それとも緒方さんに教わりたかった?)」
「(や、やめてよ!梨江子がいい!)」
「(あはは、かわいい)」


バスから降りるなり、梨江子が小声で変なこと言うから、寒いはずなのに、身体とか顔とかが暑くてドキドキしてしまう。


「てことで、たく。私、彩月に基礎教えるから、緒方さんと先に行ってきてね」
「おぅ。さっちゃん、頑張ってな。基礎さえ出来れば、上から滑るだけでも楽しいからさ」
「う、うん。頑張ってみるね」


よし、これで当分ともさんと顔合わせることなくなるかなっと思っていたのに。


「梨江子ちゃん、匠哉と滑ってきたら?」
「え?あー、いやでも」
「基礎なら俺でも教えれるしさ」
「あー、うん、そうなんだけど……」
「彩月ちゃんは、俺じゃ嫌?」
「えっ?!い、いえ、嫌じゃないですけど……わたしまったくの素人ですし、運動音痴だから、どうなるか分からないし……」
「うん、付き合うよ」


ど、どうしよう……まさかともさんが自ら教えるなんて言うと思ってなかったから、何の準備もしてなかったよ!


梨江子も何とか断ろうとしてくれてたっぽいけど、はっきりとは言えなかったみたいで、目が合うと〝ごめん〟って口パクで言われた。


「緒方さん、スパルタ……?」
「まさか。彩月ちゃんには、うんと優しくするよ」
「出来悪くても怒らない……?」
「絶対怒らない」
「うーん、じゃあお願いします……」
「うん。てことで、二人で仲良く行ってらっしゃい」


あぁぁああ、お願いしてしまったよ……。匠哉さんは「お前絶対手出すなよ!」って言い残して行ったけど、本当どうなっちゃうんだろう。
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