シェリー ~イケない恋だと、わかっていても~
「梨江子……隣同士がいいな」
「うん、もちろん!てことで、たくは緒方さんとねー」
「はいはい、分かったよ」


バスに乗り込んだ時、梨江子が匠哉さんの隣に乗ろうとしていたかは分からないけれど、遠慮がちに梨江子に言うと、あっさりと隣に座ってくれて、匠哉さんも文句言うことなく、ともさんの隣に座ってくれた。


着席してすぐにバスが出発した後、梨江子が前に座る二人に聞こえない程度の声で話をしてきた。


「彩月、緒方さんのこと意識しちゃった?」


梨江子の言葉に一瞬、喉が詰まりそうになった。そして、わたしの前に座る彼の横顔を見つめてから、梨江子のほうを見て「ちゃんと見れなくなっちゃった……」と話し、すぐに俯いた。


「彩月ちゃん、具合悪いの?」


だけど突然前から声がして咄嗟に顔を上げると、身体ごと後ろに振り返るともさんと目が合った。


「えっ?!い、いえいえ!元気です!!」
「そう?ならいいけど、具合悪くなったら言ってね?」
「……はい、ありがとうございます」


あー、ビックリした。それにしても、ともさんの声も言葉も心臓に悪い。会った当初から意識はしてたと思うけど、梨江子に言われて更に意識はしてる気がする。


チラッと梨江子のほうを見ると、口パクで「かわいい」と言われ、それが恥ずかしくて再び俯くと、目的地に着くのをひたすら待った。

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