ウソつきより愛をこめて

「ちょっとー、やっぱりヨリ戻ったんだ?」

「…びっくりした~…」

振り返ればそこにいたのは美月で、私はほっと胸を撫で下ろす。

だってあんな会話を他の人に聞かれてしまったら、きっとあらぬ誤解を与えてしまうだろうから。

「戻ってないし。やっぱりって…それ、どういう意味?」

「ええ!?だって今寧々ちゃんと待ってるって…。事情話して、一緒に住み始めたんじゃないの?」

「…寧々のことは、まだ話してないし…。私が遅番で橘マネージャーが早番の時だけ、先に帰ってご飯食べさせてもらってるの。夜はちゃんと帰って自分の部屋で寝てるし」

美月は私の話を聞いて、あからさまにがっかりした表情を浮かべている。

あの日以来、また以前のように橘マネージャーが寧々に会いにうちへ来るようになった。

…触れてきたのも、あの日だけ。

意識しまくっている私とは対照的に、彼は何事もなかったように接してくる。

「えー、今ラブラブだったじゃん。それ、差し入れでしょ?」

「どこをどう見たらラブラブに見えんの…。嫌がらせだよ。今日寧々とすき焼きするって言ってたし」

「忙しくなるとエリカは何も食べなくなるからね。お菓子なら、口にしやすいと思ったんじゃない?それにもう上がってから1時間以上経ってるのに…これ、全部ひとりでやってってくれたんでしょ?」

「……」

「尽くされすぎだよ。贅沢者」

なんだか居心地が悪くなって、私は美月から目を逸らした。

…橘マネージャーの行動に優しさが見え隠れするたびに、どうしたらいいのか自分でもわからなくなる。

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