ウソつきより愛をこめて

「…寒っ」

仕事を終えて職員通路から外に出た瞬間吹き荒んだ北風に、私は首元のファーに顔を埋めて手を擦り合わせた。

クリスマスまで、もうあと三日。

周りは色とりどりのイルミネーションに彩られ、行き交う人々もどこか浮かれていて街は賑やかだ。

去年は私にとってはクリスマスなんてどうでもいいような行事で、仕事に追われているうちにあっいう間に過ぎ去っていたし、一緒に過ごすような人もいなかった。

一昨年に至っては史上最悪な思い出になってしまったわけで、私はきっとクリスマスに縁のない女なんだって心のどこかで思ってたのに。

…今年はなぜか、ひとりじゃない。

これから寧々と笑顔でここに現れるであろうその人の顔が浮かんで、胸の辺りにじんわりとした暖かさが広がるのを感じる。

このままクリスマスも当たり前みたいに一緒に過ごして、眠ってる寧々の枕元に、2人でこっそりプレゼントを置きに行ったりするのだろうか。

それが楽しみで仕方ない自分と、罪悪感に押しつぶされそうになってる自分とで、私の心はちょうど半分ずつを占めている。

どちらにせよ今年のクリスマスは、私にとって何か特別なものになるような予感がした。



「エリカ…?」

人ごみに紛れて聞こえてきたその声を、私は最初空耳だと思った。

会えなくなって、もう随分経った気がする。

懐かしくて甘酸っぱい思い出に包まれながら、“彼”を思い浮かべたその時―――。


「エリカ、エリカだよな…?」

うしろからやんわりと腕を掴まれた私は、首だけを動かして後ろに視線を向けていた。

「…ひ、ろくん…?」

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