ウソつきより愛をこめて
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それから年末にかけて、慌ただしく毎日が過ぎていった。
偶然にも公休が合わないおかげで、あの日から橘マネージャーと顔を合わせることもなく、気づけば4日があっという間に過ぎている。
隣の部屋に引越し業者が入っているのを偶然見かけたから、彼はもう東京へ戻る準備を始めているのだろう。
私たち販売員とは違って、本社勤めのマネージャーは二十八日から年末年始の休暇に入る。
彼と顔を合わせることに不安を抱えていた私は、出社した後そのことに気づいてかなり拍子抜けしてしまった。
「どうしたの?浮かない顔して。…早く忘れなよ。あんな三十路男」
「三十路男って…。違うし。もうすぐ寧々とお別れだから、感傷に浸ってるだけ」
美月には橘マネージャーに本当のことを話したら、呆気なく振られたと言ってある。
彼女は最初ひどく驚いていたけれど、今はこんな風にしゃきっとしない私を叱咤してくれるようになった。
「あー、三十一日東京に行って元旦の夜に帰ってくるんだっけ。弾丸ツアーすぎるでしょ」
「寧々のためなら…なんでも出来るし」
「ふーん。私はてっきり、橘マネージャーに会いに行くのかと思ったんだけど」
「そんなわけないでしょ!…もう、きっぱり忘れたから」
大体、橘マネージャーが東京にいるとも限らない。
あのキレイな彼女と、ゆっくりどこかへ旅行に出かけているかもしれない。
そんなくだらないことを考えて、私はまた勝手に落ち込んでしまった。
「…それならいいけど?」
美月に見透かされないように、顔では平静を保つ。
(本当は引きずってる、なんて言ったらどやされそう…)
私が休みの日に出勤していた人たちだけに挨拶をして、彼は逃げるように私の前から姿を消してしまった。
…だから皮肉にも、クリスマスのあの日が顔を合わせた最後の日になってしまったんだ。