ウソつきより愛をこめて

「…あのぉー、結城店長」

「なに?」

「今週の土曜日あたし遅番なんですけどぉ、急に予定が入っちゃって…。お休み頂いてもよろしいですかぁ?」

もう一人の大学生美穂ちゃんが、クリクリと大きい目で見つめてくる。

…ってかデートだろ、どーせ。

彼女は必要以上に声が大きいから、最近彼氏が出来たって話は休憩室から筒抜けだった。

「いいよ。私がフル番で出るから」

「わぁい。ありがとうございますぅ」

ふざけんなと説教したい気持ちを押さえて、表面上の笑顔を繕う。

生活がかかってる社員とは違って、彼女たち学生に失うものは何もない。

居ずらくなれば無断欠勤どころか、それきり出勤してこない場合もある。

ただでさえ人手が足りないのにいきなり辞められたら、店長としてはたまったもんじゃない。

こんなこと繰り返していたらストレスの貯まる一方だけど、面接して一から教育しなおす労力に比べたらどうってことないと思う。

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