ウソつきより愛をこめて
カウンターのパソコンと睨めっこしながら売れ筋商品をチェックしていたら、ほぼ無意識にため息が出た。
自動発注が追いつかなくて在庫が少ない商品を見つけては、去年の売上実績と照らし合わせながら1点1点追加の発注を行っていくなんとも地道な作業。
でもこれを欠かすと、人気商品はたちどころにサイズやカラーが欠品してしまう。
そんな私の努力の甲斐あって、この店舗は今や南東北ゾーンで一番の売り上げを誇っているのだ。
でも…正直喜んでばかりもいられない。
競合がいくつもひしめき合ってるこのレディスファッションフロアは、言わば激戦区。
大事なことは売り上げを維持し、少しずつでも確実に伸ばしていくことだ。
期待されてるだけに、もし売り上げを落として上から睨まれたらひとたまりもない。
「…げ…っ」
メールを確認していると、ちょうど本社の販売促進部から通達メールを受信した。
どうやら十二月になってから、東北地区担当のマネージャーを一人ヘルプとして派遣するらしい。
確認ではなく強制だ。
ぶっちゃけ繁忙期前に使える社員が来てくれたら、めちゃくちゃ有難い。
でも私は今のメンバーで乗り切れるから必要ないと、間を置かずに返信した。
今年は前年の売上を落としていないのだから、文句は言わせない。
…もし来るのがあの人なら、絶対に会いたくない。