ただ守りたかった居場所
月曜日の昼休みに、安部が私のところに来て、


「佐々木さんのこと本当に好きになりそうです。」


と言ってきた。



「どんなところがいいの?」



「私、のんびりしてるんで、佐々木さんみたいにゆっくりでマイペースな人が良いんです。」


と、安部は佐々木に惹かれていた。



『まだ、何も佐々木のこと知らないくせに、私から取らないで。』


と心で叫んでいた。




それから安部は、昼休みも毎日、佐々木の席に行き、話しをして過ごしていた。



私と佐々木は昼休み話をすることがなくなっていき、今まで私にとって、当たり前だったことが、当たり前じゃなくなっていくことが増えていった。



安部は私の前に座っていたので、佐々木が用事があって私の席に来るたびに、私達の事をジッと見てきて、私はつい、無駄話を止めさっさと佐々木が自分の席に戻るような雰囲気を出したりしてしまった。



今までは無駄話をしながら、お互い突っ込みあって、和気藹々と過ごしていたのに、安部の視線を感じるようになり、それが出来なくなってきていることが、当たり前じゃなくなってくることの一つだ。



そんな事を私は感じているなんて知らない安部と、水曜日の定時少し前にトイレで会った。



「今日、もしかしたら佐々木さんと、ドライブ行くことになりそうなんです。何度も誘ってよかったです。」



とうれしそうに報告してきた。




「よかったね。」


と一言返事をするのが、私には精一杯だった。




私が、何回か何処かに行きたいって誘っても、結局具体的に話は進まなくて、何処にも連れて行ってもらえなかったのに、彼女は簡単にドライブに行くことになったことを聞かされて、胸がズキズキと痛んだ。
< 37 / 46 >

この作品をシェア

pagetop